出版物
東工大‐台湾国立中央大学のジョイントシンポジウムに参加して
土木工学専攻(助教)
渡辺 健
1.シンポジウムの概要
平成20年9月23日〜24日に,台湾の国立中央大学(NCU)において,都市地震災害の被害軽減に関する東工大-台湾国立中央大学のシンポジウム(2008 Taiwan-Japan Joint Symposium on the Advancement of Earthquake Hazard Mitigation Technology)が開催された.このシンポジウムは,東工大都市地震工学センター(CUEE)の活動として,2005年より毎年開催されており,NCUとの研究や教育に関する交流促進の場となっている.CUEEより時松教授,翠川教授,梶教授,二羽教授,盛川准教授,高橋准教授,筆者および博士後期課程の柴山氏が参加した.開会では,Tang教授よりNCUにおける研究テーマが,および時松教授より本年度採択されたG-COEプログラムとCUEEが紹介され,続いてCUEEとNCU間の交流協定が更新された.会議には大学院生も多数参加し,地震工学全般に関する17件の発表に対して活発な討議が繰り広げられた.また昼休みには,7月に東工大で開催されたコンクリートミニカヌー大会におけるNCUと東工大の学部生の交流の様子が紹介され,来年度以降の学生交流の積極的な推進が確認された.
2.ポストシンポジウムツアー
【台南市】台南は,清朝時代初期の台湾の首府であったこともあり,新旧建築物の複合が特徴的である街であった.台南では,国立成功大学教授の李徳河博士に案内頂いた.李教授は,土木学会台湾支部の支部長も務めておられ,美しい日本語でレンガ造りの平城であるゼーランジャー城や,国家一級古蹟の赤崁楼を紹介頂いた.
【八田與一と嘉南大圳】 台南市から北東の位置に烏山頭ダムがある.これは,台湾で最も有名な日本人土木技師:八田與一が監督し,1930年に竣工したロックフィル式ダムである.水害と間伐が続く不毛の地であった嘉南平原に対して,烏山頭ダムを中心にした灌漑施設の整備(嘉南大圳)と稲作・畑作の3年輪作制の導入は,同地域における農作物の最大限の産出を可能にした.現在では,ダム湖を中心にしたレジャー開発も進められ,ダムは本来の目的以外にも多方面に活躍しつつある.しかし,ダム堰堤に建つ八田與一の銅像,そして八田夫妻の日本式の墓と毎年の慰霊祭は,時を経ても台湾の人が如何に二人を想いこの事業に感謝しているかが強く感じさせられた.
【台北北投温泉郷】日本が開発した温泉保養地であり,台北の中心地から地下鉄でアクセスできる.日本風家屋も多数残っている中,特に目を引くのが国の三級古跡に指定されている北投温泉博物館である.これは,1913年の日本統治時代に北投公衆浴場として落成し,戦後の建物の荒廃を経て1998年,博物館として再出発した建築物である.一階がレンガ造りの洋風,二階が木造の和風になっており,ローマ様式の円柱や畳の休憩室という派手やかさと落ち着いた趣を混在させたデザインは,館が長く台湾の人にも愛されている所以であることに共感した.
3.最後に
日本人技師による公共施設を視察して,民族の違いを超えてより良い社会基盤創生を目指すといった,技術者としての真髄を教えられた.台湾で触れた先人たちの心を忘れず,NCUとCUEEの交流促進に一層努めて参りたい.