出版物
15WCEEに参加して
建築物理研究センター(助教) 山崎義弘
2012年9月24日から28日の5日間、ポルトガル・リスボン市にあるCentro de Congressos de Lisboaにて開催された第15回世界地震工学会議(WCEE)に、都市地震工学センターの教員・研究員・大学院生が参加し、研究発表を行った。都市地震工学センターのOBや客員教員を含めると50名以上の大所帯である(写真1)。
前々回(2004年:カナダバンクーバー)と前回(2008年:中国北京)と同様、都市地震工学センターの広報活動を行う展示ブースを出展した(写真2)。若手教員・研究員・大学院生が担当し、都市地震工学センターの活動紹介や毎年開催している国際会議の宣伝を行った。3回目のブース展示ということで、過去2回の反省を活かして展示の工夫を施すことができた。過去の国際会議のProceedingsの配布も行ったが、これがかなり人気であっという間に無くなってしまった(中には重い冊子を持ち帰られた方もいた)。こういった地道な宣伝活動が、都市地震工学センター主催の国際会議への参加者増に繋がってきたのだと思う。今回のWCEEでは展示ブースを行う部屋が、ランチ、ティーブレイク、E-ポスター発表と同じ部屋であったため、気軽に大勢の方が見えられたように感じた。筆者はブース担当のタイムテーブルを割り振る係であったが、参加して頂いたスタッフにはこの場を借りて御礼申し上げます。
三日目には笠井和彦教授がSpecial Sessionの座長として、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震で観測された建物応答に関する発表が行われた。都市地震工学センターの教員やOBらも発表者として参加しており、本学すずかけ台キャンパスにある20階建ての免震建物であるJ2棟の観測データも発表された。東北地方太平洋沖地震については海外の地震工学研究者も関心が高いようで、セッションは盛況であった。今は振動台実験により実大建物の地震挙動を再現することも可能であるが、やはり中高層建物となると実験の規模の制約もあるため、実際の地震での観測データは特に貴重であり、これらの蓄積により新たな研究課題も見つかっていくのだろう。
今回のWCEEでは通常のオーラル発表、ポスター発表の他に、E-ポスター発表という形式があった。これは発表内容を事前に数頁のスライドにまとめて投稿し、会場にはE-ポスター用のパソコンが置かれていて好きな時間に閲覧できるシステムである。発表者に質問をしたい場合は、決められた時間にパソコン付近にいれば良い。会議中の閲覧数が発表者ごとにランキングになっていたのは面白かったが、ほとんど閲覧されていない発表もあった。キーワードで検索して興味のある研究発表に絞って閲覧できることがメリットであろうが、逆にマイナーな研究分野ではタイトルに工夫を凝らさないと多くの人に閲覧してもらうのは難しくなるだろう。筆者はポスター発表であったが、こちらの方が常に来訪者がいて活発な議論が行われていたような気がする。
次回のWCEEの開催都市として横浜が立候補していた。次々回が日本で開催されるかはまだ分からないが(少なくともオリンピックは開催されるが)、今回のWCEEに参加して日本が世界の地震工学研究をリードしている存在であることを実感することができたし、今後もそうあり続けるために少しでも役に立てるよう、より一層研究に邁進していきたい。
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写真1 会議場前での集合写真 | 写真2 都市地震工学センターの展示ブース (研究員や大学院生が見学者に対応している) |