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地震に対して損傷制御効果に優れたコンクリート系構造と木質構造の開発
建築物理研究センター(教授) 坂田弘安
1. PC圧着関節工法の開発
コンクリート系構造において地震後の損傷制御を実現するための工法、「PC圧着関節工法」の開発を行った。従来の鉄筋コンクリート構造は、変形するとひび割れが生じ、剛性も著しく劣化してしまうが、この工法はプレストレスを導入した柱部材と梁部材をPCより線によって圧着し、関節のように回転させるため、地震後の損傷が極めて少ないことが特徴である(図1)。図2に示すように、除荷後の残留変形が少なく、想定通りの性能を発揮することを実験により確認し、さらに実験で得られた荷重−変形関係を精度良く追跡できる評価法も提案した(図3)。また、図4のようにPC圧着関節工法による外付けフレームを耐震補強として適用するための研究も行った。本工法は、既に約400棟の実績があり、その全てが東日本大震災においてほとんど損傷が見られず、その優れた性能が実証された。
2.木造住宅用高性能制振壁の開発
我が国の住宅は木造の戸建住宅が多数を占め、その約40%は耐震性能が不足していると言われている。また、新築においても地震後の損傷を最小限に留める、財産保持性の高い住宅が求められている。以上から、安価かつ高性能で、さらに中高層建築で既に多くの実績のある制振技術を木質構造に適用するための研究を行い、粘弾性、鋼材、摩擦など多様なダンパーを取り付けることができる木造住宅用高性能制振壁を笠井教授と共同で開発した。制振壁を組み込んだ架構の振動台実験を行い、非制振の架構に比べて最大変位が約半分になり損傷が抑制されたこと、さらに余震を模擬した加振でも元の性能を保っており、住宅の財産保持性を高められることを確認した。本制振壁は民間企業2社が実用化し、既に200 棟超の施工実績がある。
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図1 PC圧着関節工法による床スラブ付き |
図2 PC圧着関節工法による部分架構の実験結果 |
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圧着部における除荷時歪度分布 |
スラブ付きQ-R関係(1/50以降) |
図3 PC圧着関節工法骨組の力学モデルとそれによる解析結果 | |
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図4 PC圧着関節工法外付けフレームによるRC建物の耐震補強 | |
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図5 木造住宅用高性能制振壁を組み込んだ架構の振動台実験 上段:一般的な合板耐力壁架構、下段:粘弾性ダンパー付き制振壁架構 |