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Home > 出版物 > ニューズレター > 東日本大震災と事業継続計画(BCP)

東日本大震災と事業継続計画(BCP)

東京工業大学都市地震工学センター(特任教授)丸谷 浩明
(NPO法人 事業継続推進機構 理事長)

*東日本大震災での企業被害

 東日本大震災では、多くの企業が津波、地震動、液状化などの被害を受け、電力不足の影響は現在も続いている。さらに、部品や素材の生産が止まった影響が、サプライチェーンを介して日本全国、海外にも及んだ。

 被害地の仙台市の商工会議所が大震災発生後ほぼ1カ月に実施したアンケートでは、「自社・自店の事業拠点の被災など直接的な被害を受けている」が33.3%、「取引先・顧客の被災など間接的な影響を受けている」が56.7%であった。また、東京商工会議所が3月下旬から4月上旬に行ったアンケートでは、「震災により何らかの影響を受けた」企業は92.7%であり、理由の内訳(複数回答)をみると、「売上・来店者数等の営業状況に影響を受けた」が78.2%と消費自粛の影響もみられ、「原材料・資材・商品等の調達状況に影響を受けた」も59.6%であった。

  わが国で懸念されている大地震には、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震などがあり、今回の教訓を活かして明確に対応をとらなければ、日本の生産・供給体制に対する内外の不安を払しょくできないであろう。

*「供給責任」を果たすことと「結果事象」から考えること

  我が国企業は、近年、事業継続計画(BCP)の作成を精力的に進めてきた。このBCPが東日本大震災で有効に働いたかどうかを分析してみると、「代替戦略」が備わっていたかどうかが有効性のカギになったとみられる。

  この点を少し説明してみたい。BCPと従来の「防災」の考え方と比べると「供給責任」が強く意識されている。供給が許容時間を超えて中断すれば、取引先(顧客)を失い、企業は立ち行かなくなるからである。また、取引先の立場では、部品や素材の供給の途絶は原因を問わず避けてほしい。そして、この面も踏まえ、BCPでは、被害の「原因」からではなく「結果事象」から考えることが強く推奨される。つまり、「この重要拠点が使えなくなったら」、「このキーパーソンがいなくなったら」といった事象から出発して考えるという意味である。

  こういった考え方は、「防災」の発想と異なるが、メリットは大きい。すなわち、ある原因を特定した被害想定にこだわると、それを超えた被害になれば想定外になってしまう。また、自社の事業中断の原因は実は相当多様なので、一つ一つの原因に防御策を講じるのではきりがない。その点、「結果事象」から考えると、骨太の対応戦略に到達しやすいのである。さらに、結果事象から考えると、業務継続に不可欠なリソースの代替を確保する「代替戦略」の有効性に目が向く。事業拠点でいえば「現地復旧戦略」でなく「代替拠点確保の戦略」となる。

  今回の被災企業のBCPが、代替戦略を持たず」、拠点やキーパーソンを守るだけ留まっていたなら、政府の被害想定を超えた今回の津波、地震動等で拠点やキーパーソンを喪失してしまえば打つ手がない。一方、「代替戦略」を少しでも考えていれば、対応の仕方に見通しが立つわけで、実際、今回の大震災でも成功事例も見受けられた。

*代替拠点の確保のための工夫

 とはいえ、代替拠点を用意するのは簡単ではない。特にコスト面での課題が大きいので工夫が必要である。対応策としては、第一に、災害等の発生時になるべく早期に代替拠点を立ち上げられるよう、できる範囲の準備をしておくことがある。例えば、重要関係先と連絡がとれる別の場所(社長の自宅などでもよい)を「代替連絡拠点」として定めておき、重要な情報のバックアップも保持しておく。また、工場などについては、代替生産拠点の確保のための投資が実際にはできなくても、その代替拠点の場所と立ち上げ方法を十分検討して決めておき、代替拠点の立上げの机上訓練などをしっかりしておくのも一例である。

  第二に、同じ災害で同時に被災しない遠隔地の同業他社と「災害時相互協力協定」を結び、助け合うことも代替戦略になる。自社がすぐに復旧できない被害を受けても、協力者を通じて技術・ノウハウを活用し、得意先との関係も何とか維持する。残念ながら実例はまだ少ないが、今後、積極的に検討していくことが望まれる。

*サプライチェーンの問題

 以上に加え、部品や素材の供給が止まるサプライチェーンの途絶にどう対応するかが、もう一つの事業継続上の大きな課題である。ここでも、まず「代替戦略」の考え方を採用する必要がある。つまり、供給元の多重化(2階層以上の上流が一つの供給者に収束していないかの確認を含む)、あるいは、単一の供給元への生産拠点の多重化の要請などが必要である。加えて、各企業・業界は、危機時における安定供給を重視し、コスト節減、細かな製品差別化、供給元の囲い込みなどの企業戦略をある程度抑制するといった、価値観の変更も必要と思われる。例えば、製品のスペックの決定に当たり部品の代替品調達がどの程度容易かをこれまでより重視したり、製品差別化をめざすにしても根幹的な部品以外はできるだけ共通化したりする、などの方向に進むべきであろう。

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