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 ■ 能登半島地震の地震動と余震観測

環境理工学創造専攻
(准教授)山中浩明

 2007年3月25日の能登半島地震では,能登半島北部で大きな被害が発生ました.とくに,石川県輪島市や穴水町では,古い木造家屋の全壊や斜面崩壊などが集中してみられました.都市地震工学センターでは,被害や強震観測点の調査,余震観測,地盤調査などを行い,その成果を本センター主催の一般向けのセミナー,地震工学・工学地震学談話会,各学会などで報告してきました.

 能登半島地震は,海域と陸域の境界で発生したほぼ垂直な逆断層型の断層であり,図1のように震源の一部は輪島市門前町に達しています.能登半島には,多くの活断層の存在が確認されていましたが,それらの多くは長さが非常に短いものであり,被害を生じるような地震の発生が指摘されてはいませんでした.しかし,今回の地震後に,様々な調査の結果を再検討した結果,今回の地震に関係する活断層の存在が海域に確認されています.

  この地震では,図1に示すように震源近傍で計測震度6強の大きな揺れが観測されました.とくに,輪島市中心部と門前町,穴水町などの被害が甚大であった地域で震度が大きいことがわかります.輪島市中心部では,1km程度離れた2地点において,図2にように地震動特性が大きく異なる強震記録が得られ,地盤の影響による差異であると考えられます.揺れの大きい気象庁輪島観測点での地震動の応答スペクトルは,周期約2秒で兵庫県南部地震や中越地震での震度7の地域(神戸市鷹取や川口町)における地震動レベルに近い値となっています(図3).この地域には,固有周期が長い高層建物が存在せず,兵庫県南部地震のように被害が激しくならなかったと考えられます.


図1:震源と主な観測点の位置


図2:能登半島地震と過去の地震の強震動の比較


図3:応答スペクトル(減衰5%) の比較

  門前町の震度計では1Gを越える加速度が観測されましたが,加速度記録はないようです.そこで,輪島市門前町での地震動特性を明らかにし,被害の原因を解明するために本震の発生直後からこの地域で余震観測を実施しました.震度計の位置と周辺の硬質地盤(工学的基盤が地表付近にある)でのM5以下の余震の記録から求めたスペクトル比が図4に示されています.周期約1秒で大きな振幅比を示しており,表層地盤による増幅効果が非常に大きいことがわかります.この地盤増幅効果が大加速度の主原因のひとつであると考えられます.このほかにも,輪島や穴水では能登半島地震の余震観測がいくつかの機関によって行われており,本震の強震動の理解と被害原因の解明のために役立っています.ここで用いた強震記録は,K-NET,気象庁,JRによるものです.記して感謝いたします.


図4:余震のスペクトル比



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