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 ■ 第3回都市地震工学国際会議の報告

都市地震工学国際会議実行委員会

 2006 年 3 月 6 , 7 日の両日にかけて,第 3 回目となる CUEE 主催の都市地震工学国際会議( Third International Conference on Urban Earthquake Engineering )が東京工業大学すずかけ台キャンパスにおいて開催された.口頭発表として海外からの研究者 20 名,国内他大学・研究所など 34 名,東工大 23 名の計 77 名,ポスター発表として海外 1 名,国内他大学・研究所など 4 名,東工大 18 名の計 23 名,合計 100 名による研究発表が行われた.内容は,地震動や地盤や構造物の安全性,地震防災に関するセッションの他に, 2004 年インドネシアのスマトラ島沖地震による津波に関するセッションが設けられた.今回の会議では,会場を 2 つ設け,双方のセッションをパラレルに進行させることにより,今までより多くの発表が行われるようになった.このため,論文集も約 750 頁と充実した内容となった.本会議は発表・質疑ともに英語で行われ,参加者は約 310 名と大変盛況であった.以下にその概要を報告する.

Esteva 教授による講演

Shing 教授による講演

目黒教授による講演

 3 月 6 日午前に始まった「地震動セッション」では,瀬尾教授(東工大),翠川教授(東工大),元木助手(東工大), Somerville 博士( URS コーポレーション), Wen 教授(台湾中央大)の司会進行のもと,計 7 編の口頭発表があった. Esteva 教授(メキシコ国立自治大)が, 1985 年メキシコ地震の被害を教訓にし,現行のメキシコ耐震基準にいたるまでの技術経緯について基調講演を行った. Somerville 博士による準基調講演では,地震断層が現れる場合と伏在断層による地震の場合の震源特性と地震動特性の違いを論じた.釜江教授(京都大)が準基調講演として,経験的グリーン関数と 3 次元地下構造モデルを用いた理論計算と組み合わせて,大阪平野において東南海,南海地震による地震動予測に関する発表を行った.また,高解像データを用いた地震動シミュレーションの開発,地震予知のための活断層クリープ現象のモニタリング,北海道東北地域の減衰の違いを考慮した地震動強さの評価,特性化震源を用いた逆解析手法に関する発表があった.(元木健太郎 助手)

 「コンクリート構造」のセッションでは,二羽教授(東工大),三木助手(東工大),河野助教授(京都大), Wang 助教授(台湾中央大)の司会進行のもと, 1 編の基調講演に加え, 7 編の一般講演が行われた.基調講演では, Shing 教授(カリフォルニア大サンディエゴ校)によって,米国における地震工学に関する研究の紹介があった.レクチャーでは,現在,米国科学財団( NSF )の支援によって行われている研究プロジェクト NEES ( Network for Earthquake Engineering Simulation )の紹介に加え,コロラド大学において実施された高速載荷が可能なハイブリッド実験について,工夫された試験方法についての講演があった.一般講演では, RC 柱, RC 梁,柱−梁の接合部,プレキャスト部材の接合など,様々な構造部材を対象とした実験的検討について紹介された.例えば,地震後の残留変形を小さくする,もしくは制御するために,異なる素線降伏強度を有するストランドを用いた RC 柱部材の正負交番載荷実験や,せん断耐力,変形性能の向上を目指し,線状の連続炭素繊維で補強した鉄筋コンクリート部材の構造実験について発表された.また,台湾で一般的に用いられている低層 RC 建物を対象とした実験について, Wang 助教授から紹介された.その他,解析的な検討については,分布ひび割れモデルを用いた有限要素解析によって得られた結果を再整理し,より現実的にひび割れ分布やひび割れ幅を評価する手法や,動的解析の結果を確率的に評価する方法,実務での使用を視野に入れた RC 高架橋全体系を対象とした地震時応答解析手法などに関する成果が発表された.(三木朋広 助手)

 午後 2 時半よりすずかけホールラウンジにてポスター発表が行われ,東工大の教授などによる研究発表が紹介された.また,本キャンパス内の免震構造ビル( J2 棟)の見学会が開催された.

 「地盤工学セッション」では,時松教授(東工大), Hwang 教授(台湾中央大), Boulanger 教授(カリフォルニア大デービス校),飛田助手(京都大)の司会進行のもと,計 9 編の発表が行われた.国外からの講演者は, Boulanger 教授を始めとして台湾中央大学から 2 名,オックスフォード大学から 1 名の計 4 名であり,国内からの講演者は学外 6 名,学内 8 名であった. Boulanger 教授はシルト・細粒土の液状化強度基準に関する講演を行い,また他の講演・発表者からも,液状化地盤の杭基礎構造物および堤防などの振動台実験・数値解析,側方流動における杭基礎被害の再現解析など,地盤の液状化に関する研究が全体の半数以上を占め,国内,国外を問わず関心の高さが伺えた.また, 2004 年新潟中越地震でのダム被害や被災地域での地盤振動特性など近年頻発している地震を題材にした研究,粘性土の強度特性,地下構造物,波の伝搬の研究など,発表のテーマは多岐にわたり,いずれも活発な討議が行われた.(鈴木比呂子 助手)

 「鋼構造セッション」では,山田助教授(東工大),松本助教授(横浜国立大), Hsu 教授(台湾中央大),多田助教授(大阪大)の司会進行のもと,全部で 7 編の口頭発表が行われ,活気ある発表,質疑応答がなされた.まず,多田助教授より解析プログラムをインターネットで統合した構造解析について発表がなされた.そして Hsu 教授より,コンクリート充填の鉄骨柱に対する軸力と 2 軸曲げの実験結果が説明された.次に田川 PD (東工大)より,心柱による多層建物の動的安定性向上に関する研究発表がなされた.続いて岡崎助教授(ミネソタ大)より鉄骨偏心ブレース骨組におけるリンク部と柱の接合部の研究発表があった.さらに石原氏(国総研)より柱脚部の浮き上がり許容による地震時応答の低減に関する研究発表があった.さらには吉敷 PD (東工大)より損傷制御型構造に用いられる梁下ダンパーの研究発表があった.最後に松本助教授より柱梁接合部の破断時,および終局時における性能についての研究発表がなされた.鋼構造に関して多種多様な研究テーマが討論されて非常に刺激,熱気のあるセッションとなった.また,午後 6 時半より約 100 名の参加による懇親会が開かれ,海外研究者多数を含めた交歓が行われ 1 日目が終了した.(田川浩之  21 世紀 COE 研究員)

 翌 3 月 7 日は午前 9 時半より翠川教授(東工大)の司会のもと,目黒教授(東京大)による基調講演が行われた.目黒教授は発展途上国の組積造建物に対する PP バンドによる耐震補強技術に関する発表が行われた.提案された補強技術は,簡単で,安価で,かつ効果的であると紹介され,多くの写真と動画を利用したプレゼンテーションは,目黒教授の力強い声と相まって非常に魅力的であった.午前 10 時の「地震防災と人間行動セッション」では,瀬尾教授(東工大),大野教授(東工大),吉川教授(慶応大), Chen 教授(台湾中央大)の司会進行のもと,台湾からの参加者を含めて 6 人の発表者は,それぞれ地震時の災害の予測およびその被害を防ぐための震災防災教育に関する研究内容を紹介した. Chen 教授は,地震災害の状況で救出活動に活用可能な震災時道路状況予測シミュレーションモデルを紹介し, Hsu 教授(台湾中央大)は台湾の住居用の地震保険プールモデルを作るためのリスク評価に関する論文を発表した.他の論文発表では,東京 23 区において時間の経過につれて,建物材料および構造の変化による震災時の火災拡散速度を予測した研究や,建物の耐震設計水準を統計的観点で適切に決めるための新しい方法などが紹介された.防災教育に関しては,カードゲームやスゴロクなどを通じて子どもおよび大人を対象に防災知識を伝える教育方法と,リアルタイム物理シミュレーションなどの VR 技術を利用した子ども向けの防災教育ツール開発の研究が紹介された.( 柳在鎬 都市地震工学研究推進研究員 )

 「橋梁構造セッション」は,佐々木助教授(横浜国立大),渡辺助手(東工大),葛西講師(名古屋大), Lee 助教授(台湾中央大)の司会進行のもと,とり行われた.このセッションは,東京工業大学の卒業生を始めとした若手によるセッションとなった.研究トピックは多岐にわたり,光ケーブルを用いた橋梁のモニタリングシステム,残留変位低減を目的とした新型橋梁構造形式の開発,非線形橋梁構造物の地震応答制御,座屈拘束ブレースの繰り返し弾塑性挙動に関する研究などの発表がなされた.発表者の多くが元先輩ということもあり,学内の学生や関係者から多くの質問が寄せられ,発表者も質問事項以外にさまざまな情報を提供して下さり,大変有意義な討議の時間であった.学内からは助手 2 名および TA2 名が研究発表を行い,先輩達からの手厳しい質問の洗礼にもめげずに果敢に質疑応答を行っていた.若手研究者にとって励みとなる非常に有意義な機会であった.(渡邊学歩 助手)

 会議 2 日目の午後から基調講演で始まった「津波セッション」は,大町教授(東工大), Latief 博士(インドネシア・バンドン工科大), Wijeyewickrema 助教授(東工大), Ruangrassamee 助教授(タイ・チュラロンコン大)の司会進行のもと,当日の閉会宣言の直前まで行われた.なお,津波セッションは 4 時間強の 2 セッションを使用した特別セッションであった.基調講演者に今村教授(東北大),準基調講演者に Gunaratna 博士(スリランカ・モロツア大学), Latief 博士,そして Ruangrassamee 助教授をお招きした.一般講演には,東工大から 4 名,他の大学から 3 名,大学以外の研究機関から 3 名の参加者があり,学内外,国内外の研究者がバランスよく参加したセッションであったのではないかと思われる.発表内容は,今村教授が 2004 年インドネシア地震津波の概要や最新 CG を駆使した臨場感溢れる津波被災状況の再現などで聴衆の目を引き,準基調講演者はそれぞれ各国の津波被災状況を発表した.一般講演も 2004 年スマトラ沖地震津波に関連したテーマが半数以上であったが,その他にも,津波の数値シミュレーションに関する発表や津波の観測方法,津波警報システムなどの発表もあり発表後の質疑では活発な議論が繰り広げられた.(井上修作 教務職員)

 「制振・免震構造セッション」は,笠井教授(東工大),緑川教授(北海道大),三田教授(慶応大),竹内助教授(東工大)の司会進行のもと,とり行われた.三田教授は MATLAB を利用した建物のヘルスモニタリングシステムについて発表し,その後,竹内助教授ほか 6 名の研究者が,履歴ダンパーを用いた東工大校舎の耐震補強事例,履歴ダンパー制振構造のダンパー累積塑性変形量の予測方法,性能評価シートから読み取る日本の免震構造の傾向,設計用せん断力係数分布への減衰の影響,質量による増幅機構をもつダンパーを用いた免震構造,日本の免震構造の性能設計規定,について発表を行った.本セッションでは,計 7 名のうち 3 名が学外の研究者(国内)による発表であり,それぞれで活発な議論が交わされた.特に日本の耐震設計に言及する研究については,海外の研究者からの質問が多かったほか,会場の大学院生からの質問もあり,盛況であった.(大木洋司 助手)

 「地震応答解析・実験セッション」では,笠井教授(東工大), Chen 教授(台湾中央大) , 堀田助教授(東工大),藤田助教授(首都大)の司会進行のもと,全部で 7 編の口頭発表が行われ,活気ある発表,質疑応答がなされた.まず, Choi 氏(東京大)によりコンクリートブロック充填の鉄筋コンクリート骨組における地震後の残存耐力(コンクリートブロック壁のひび割れ機構)についての研究が発表された.ついで Chen 教授より 1 , 2 , 3 次元の地震動モデルを用いた建物応答解析が発表された.次いで藤井助手(東京理科大)より,捩り挙動を含んだ多層建物の簡略化に関しての研究発表があった.さらに Tran 氏(東工大)より 1 自由度モデルを用いた衝突現象の予測についての研究発表があった.ついで丸山助手(千葉大)より地震時におけるインテリジェントガスメーターによるガス供給停止の予測についての研究が発表された.次に堀田助教授により, 2 階建ての壁付き(梁部材のみに接合)の骨組の振動台実験の結果が発表された.最後に藤田助教授より,日本の伝統的な五重塔についての地震応答観測についての研究発表があった.こちらでも振動系の解析,実験についての多種多様な研究テーマで非常に刺激のあるセッションとなった.(田川浩之  21 世紀 COE 研究員)

 最後に,大町リーダーが閉会の言葉を述べ,第 3 回都市地震工学国際会議が閉会となった.


講演者と CUEE メンバーとの集合写真

今回の国際会議では,学内の若手研究者だけでなく,学外の研究員,助教授,講師や比較的若い教授にも多く参加していただき,若手研究者同士の高いレベルでの意見交換や将来に向けた有意義な交流の機会を設けることができ,今まで以上に盛況な会議となったように思います.本会議の企画・運営まとめ役である笠井教授・川島教授をはじめ,堀田・山田・盛川助教授には大変お世話になりました.ここに関係者および参加者に深く感謝いたします.(序文・結文執筆,レイアウト構成:三浦弘之  21 世紀 COE 研究員)



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