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 ■ 都市地震災害の被害軽減に関する日台シンポジウムに参加して

土木工学専攻(教授) 二羽淳一郎
(助手) 三木 朋広

1.はじめに

 2005年9月25日から29日の5日間、都市地震災害の被害軽減に関する日台シンポジウム(Taiwan-Japan Symposium on Advancement of Urban Earthquake Hazard Mitigation Technology)、および1999年集集地震の被災地視察に参加しましたので、その概要を報告致します。

2.シンポジウムの概要

 本シンポジウムは、2005年3月に東工大で行われた第2回都市地震工学国際会議の際に、台湾国立中央大学(NCU)からの呼びかけで、NCUからの参加者と大町教授、時松教授、笠井教授などCUEEのメンバーの会合が持たれ、その際にNCU側から開催が提案されたものです。このシンポジウムを契機として、CUEEとNCUの研究交流や人的交流を促進していくことが期待されています。今回のシンポジウムへの東工大からの参加者は、CUEEリーダーの大町教授をはじめとして、瀬尾教授、翠川教授、竹村助教授、井澤助手とわれわれ2名の計7名でした。シンポジウムの開催に際し、大町教授とNCUのLiu学長との間で記念品が交換されました(写真−1)。

 シンポジウムでは、双方から地震工学全般に関して、計17件の研究発表が行われ、引き続き、意見交換や討議が行われました。講演プログラムは以下の通りで、地震動、地盤の液状化、構造物のダンピングシステム、橋梁モニタリング、コンクリート構造、鋼構造、地震力を受ける構造物挙動の数値解析、地震被害、確率論的な被害予測等々、多岐にわたりました。NCUからは、教員のほか、学部・大学院の学生も多数参加していました。なお、写真−2はシンポジウム終了後に、NCUの会議室で撮影した集合写真です。写真−3はシンポジウムで講演されている瀬尾教授です。写真−4〜6はNCU(現地での略称は中大)の実験室の様子ですが、十分なスペースに、大型の実験設備が整然と配置されていたのが印象的でした。

3. 講演プログラム

(1) T. Ohmachi: Seismic Safety Evaluation of Dams Subjected to Level 2 Earthquake Motions
(2) K.L. Wen, T.M. Chang, C.M. Lin: Microtremor Survey of Site Effects in the Western Taichung Area
(3) S. Midorikawa, S. Akiba, T. Masatsuki, H. Miura: Long Period Ground Motions Observed in Tokyo
(4) C.J. Lee, T.K. Hsiung: Sensitivity Analysis on Multilayer Perception for Recognizing Liquefaction Cases
(5) J. Izawa, J. Kuwano: Seismic Behavior of Reinforced Soil Wall
(6) H.T. Chen, J.C. Liu: Seismic Interaction Analysis of Deep Excavation and Subway Tunnel
(7) J. Takemura: Centrifuge Model Test Countermeasure Against Liquefaction of Sand
(8) J.P. Tang, D.J. Chiu: Study on Nonlinear Seismic Response of RC Building with Efficiency-Enhanced Damping System
(9) C.Y. Wang, H.L. Wang, M.H. Chen: Application of FBG Sensors on Bridge Monitoring and Diagnosis
(10) T. Miki, J. Niwa: Nonlinear Analysis of RC Structures Subjected to Seismic Loads by 3D Lattice Model
(11) H.L. Hsu, J.W. Tsao: Cyclic Behavior of Hollow Steel Box Columns Subjected to Eccentric Lateral Load
(12) C.Y. Wang, H.Y. Ho: Numerical Simulations of Non-ductile RC Frames with In-filled Brick Panel under Cyclic Loading
(13) Y.C. Wang: Seismic Behavior of Reinforced Concrete Beams with Rebar Curtailment
(14) K. Seo: Some Considerations about Recent Earthquake Disasters in Japan
(15) S. Yan, Y.L. Shih: A Network Flow Model for Highway Emergency Rehabilitations after A Major Disaster
(16) Y.M. Tien, C.H. Pai: A Study on Near Fault Mortality from the 1999 Chi-Chi, Taiwan
(17) W.L. Chiang, W.K. Hsu, C.P. Tseng, D.M. Hung: Fully Probabilistic Earthquake Loss Assessment and Management Model in Taiwan

4. ポストシンポジウムツアー

 シンポジウム終了後に、NCUのChen先生、Hsu先生に同行いただき、集集地震の被災地の視察に出かけました。写真−7〜8は、台中にある地震ミュージアムの屋外の様子です。ここでは地震で被災した小学校を利用してミュージアムが建設されていました。そして、校舎を被災した状況のまま保存しています。また陸上トラックも盛り上がったままでした。完全に崩壊した校舎をみると多くの犠牲者が予想されたのですが、地震発生が深夜だったため、幸いなことに校舎内に児童はいなかったとのことでした。

 写真−9〜11は、被災した石岡ダムの現在の様子です。写真−9を見るとおり、石岡ダムは完全に復旧していますが、堤体の一番奥側の断層が直撃した部分は、意図的に被災した状態のままとなっています(写真−10)。またこの部分の上流側(ダム湖側)には、ポケットパークが設けられており、断層が動いた部分にモニュメントが設置されています(写真−11)。このように被災した構造物を意図的に保存し、地震被害の記憶を風化させないことが当地ではポリシーとなっているようです。写真−12は地震で傾斜した送電用鉄塔です。現在は使用されていませんが、これも地震被害のモニュメントとなっています。

 写真−13は石岡ダムのすぐ下流にある大甲川に架かるコンクリート橋です。大きく変形した橋脚を撤去せず、主桁のみを補修して供用させたため、橋の途中で縦断勾配が大きく変化する異様な形となっています。これはモニュメントではないようです。写真−14は台北から台中に向かう高速道路沿いの至るところで見られた斜面崩壊の状況です。地震の被害と直接の関係はないようでしたが、台風や豪雨によって地盤が緩むと比較的簡単に斜面崩壊が発生するように思われました。

 写真−15と16は、集集地震の震源地に近く、完全に崩壊した伝統的な中国式寺院と、世界最高の台北101タワーのコントラストです。寺院はおそらく、地震被害のモニュメントとしているものと思われます。写真−17は故宮博物館ですが、2005年9月の時点では免震工事中でした。なお、展示品は別棟に陳列されており、精巧な美術品や工芸品を鑑賞することができました。写真−18は集集から北上した埔里市での夕食の様子です。ここは紹興酒の名産地とのことで、全員で本場の紹興酒を楽しみました。

 NCUのChen先生、Hsu先生は2005年の11月には学生を引率して東工大を訪問され、その際にCUEEとの交流協定が結ばれています。また3月のCUEE国際会議にも参加されるとのことです。今回のシンポジウムを契機として、今後、ますます実効ある研究交流や人的交流が進んでいくことを期待したいと思います。

写真−1 記念品交換(左大町教授、右Liu NCU学長 )

写真−2集合写真
(前列中央左Chiang NCU副学長、中央右大町教授)

   
写真−3 シンポジウムでの講演風景(写真は瀬尾教授)
写真−4 遠心模型実験装置
   
写真−5 大型載荷フレームと反力壁
写真−6 ペーパードレーンの実験を行っていた大型土槽
   
写真−7 大きく隆起した学校内の陸上のトラック
写真−8 完全に崩壊した学校
   
写真−9 石岡ダム(写真奥に地震被害が見られる)
写真−10 断層の大変形によってダムの一部が破壊
   
写真−11 ダムの被災部を利用したポケットパーク(断層に沿った模様が見られる)
写真−12 大きく傾いた送電用鉄塔
   
写真−13 石岡ダム下流の大甲川に架かるコンクリート橋(被災後に主桁のみを補修して使用しており、途中で縦断勾配が大きく変化している)
写真−14 台北から台中に向かう高速道路沿いの至る ところで見られた斜面崩壊の状況
   
写真−15 集集地震震源地に近い完全に崩壊した中国式寺院(意図的に被災のままとしている)
写真−16 台北101タワー
   
写真−17 故宮博物館(免震を取り入れた耐震工事中)
写真−18 紹興酒を楽しむ


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