English Sitemap
Home
Cuee
People
Research
Education
Events
Outreach
Publication
Partnerships
Openings
Link
Internal

 ■ 超高層免震構造物の地震時挙動観測

建築物理研究センター(教授)
和田 章

 CUEEの重点研究の一つとして、東京工業大学すずかけ台キャンパスに建設中の20階建て超高層免震構造物を対象に、構造物および周辺地盤の地震時挙動の観測網を構築している。これらのデータに基づく研究により、都市を構成する土木・建築構造物の耐震設計の発展に寄与するとともに、最新技術を駆使して建設された構造物の挙動を周辺地盤の動きとともに明らかにすることにより、新しい耐震技術の発展の糧にする。  

 1940年に米国カリフォルニア州の発電所で記録されたEl Centro 1940 の地震動記録がその後の耐震工学の発展に大きく寄与したように、土木・建築構造の耐震設計上、地震動の性質を明らかにすることが重要なことはいうまでもない。我々が必要としているのは安全な構造物の構築にあり、地震時の構造物そのものの動的挙動を知ることもさらに重要である。  

  その時代時代における構造物の力学的性質、動的性質の理解のもと、設計用地震動のレベルの設定により、耐震設計は行われる。耐震設計は、このようにして設計された構造物が受ける地震災害の教訓をもとに、発展してきたといえる。1964年の新潟地震では地盤の液状化、1968年の十勝沖地震では鉄筋コンクリート構造物の剪断破壊、1971年のサンフェルナンド地震ではソフトファーストストーリの考えの失敗、高架高速道路の崩落、1985年のメキシコ地震ではフラットスラブ構造の耐震性不足、最近の地震では、1989年のロマプリエタ地震、1994年のノースリッジ地震、1995年の兵庫県南部地震などで震源域における地震動特性、高速道路の崩壊、鋼構造建築の接合部破壊、古い基準で設計された鉄筋コンクリート構造のぜい弱性、老朽化した木造住宅などの崩壊などが大きな問題になった。  

  免震構造、制振構造は20世紀の後半に開発され、実用化されてきた新しい耐震技術である。この中でも免震構造は再現期間500年を超える強さの地震動に対して、免震層の変形は原点復帰可能な領域におさまり、上部構造の応答は十分に弾性変形以内におさまる設計がされており、先に示した過去の地震動に対して何も損傷を受けないことを目標に設計している。上にも述べたように、基礎が固定されている従来の土木構造物、建築構造物は地震被害により、構造設計上の問題点が明らかになり、技術の発展がはかられてきたといえるが、免震構造物の場合、被害を受けないことが前提になっており、我々の行っている設計法の確証のためには精密な観測データを蓄積し、これらを次の設計にフィードバックすることが重要である。  

  測定項目として考えているのは、周辺地盤および基礎の加速度測定および上部構造の加速度測定のほか、構造物に生じる力の測定、構造物および免震層の変形測定などである。これらの測定には従来の加速度計、歪み計を用いるだけでなく、デジタルビデオを用いた映像観測なども行う。測定箇所、測定項目を表と図に示す。将来には、広域の地盤を対象とした加速度測定、レーザー変位計を用いた変位測定、GPSを用いた絶対変位測定などに発展させる予定である。 多点かつ多種目の測定を広域に行う場合、それぞれのデータの時刻を一致させることが重要であり、長期に亘る測定を確実にすること、および将来の拡張性を確保するため、このたびの測定網にはインターネットで用いられている通信回線を用いた。これらについては山中浩明助教授、盛川 仁助教授が最新の技術を取入れたシステムを構築した。免震構造に生じる変形、歪みの測定についても最新の技術が使われており、笠井和彦教授、坂田弘安助教授、山田 哲助教授、大木洋司助手、大学院生の小沢宣行君らが設計を行った。これらの詳細については、次号以降に紹介する。



Footer