

震災時には、建物内に様々な危険物や出火、被災場所が散在しています。そのような場所に長く留まれば留まるほど危険に遭遇する可能性は高くなるため、できるだけ速やかに安全な場所に避難することが必要です。しかし現状では、これらの危険性を客観的に判定することはできず、そのため避難指示、避難行動もあいまいになっています。
そこで首都圏プロジェクトの一つである本研究では、避難時の危険度を定量的に評価することを目的として、そのための道具の一つとして避難行動シミュレーションの開発を行いました。
本研究では、避難行動シミュレーションの検証として、都内のある高校の避難訓練の実施事例を参考にしました。
【写真】避難から3分半後の様子
この学校は約600名の生徒が在籍しており、避難訓練では通常良く使う教室や実験室からの避難を想定し、避難のルートは生徒自身が作成しています。現在のところ避難のルートを作成するにあたって最適なルートのための客観的な指標はなく、本研究の最終目標とする「避難時の危険度の定量的評価」が実現すれば、より効果的な訓練が実現できると期待されます。
シミュレーションでは自律分散型マルチエージェントを用いて、実在する高校の避難訓練の再現を試みました。
【写真】シミュレーションモデル
高校の避難訓練を再現した避難行動シミュレーションモデル(動画wmv形式)
まず建物内の部屋割りから寸法までを3次元的にコンピューター上に再現し、さらに避難訓練と同じ人員をそこに配置し、同じ避難ルートで避難するシミュレーションモデルを構築しました。避難訓練実施前にあらかじめ避難行動シミュレーションを実施し、その結果から避難時に人が滞留してしまう地点を事前に推測しました。そして,実際の状況とシミュレーション結果を比較するために避難訓練当日は滞留ポイントでビデオ撮影を行いました。
そのときの比較結果を図に示します。
●実際の避難訓練(1)
![]() 避難から1分後 |
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![]() 避難から3分後 |
![]() 避難から4分後 |
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●実際の避難訓練(2)
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![]() 避難から1分半後 |
![]() 避難から2分半後 |
![]() 避難から3分半後 |
![]() 避難から4分後 |
階段と平地での歩行速度の変更などまだ改良点は残っていますが、訓練の様子は十分を再現できたのではないかと考えています。
今回は、高校の避難訓練を再現した避難行動シミュレーションモデルを構築し、実際の訓練と比較しても十分再現力がある事が確認しました。今後は,このシミュレーションを元に、避難時の危険度を定量的に評価する指標を提案していきたいと思っています。